上級 第19回(2)

●エピソード2

「この人を見よ」(岩波文庫 ニーチェ 1908年)の中に次の記述がある――
「人間の偉大さを言いあらわすためのわたしの慣用の言葉は運命愛(amor fati) である。何ごとも、それがいまあるあり方とは違ったあり方であれと思わぬこと。未来に対しても、過去に対しても、永遠全体にわたってけっして。必然的なことを耐え忍ぶだけではない、それを隠蔽もしないのだ、—あらゆる理想主義は、必然的なことを隠し立てしている虚偽だ——、そうでなくて必然的なことを愛すること」
――運命愛は、単なる運命論ではない。運命に向かって堂々と歩んでいく、必然を必然として受け止める不屈の魂であり、守るべきを守る不動の信念であり、打ち立てるべきを打ち立てる気魄である(“超人”の超人たる点)。

(健全に自己を肯定することを最重要とする)
 

●問題2

「この人を見よ」でニーチェと主題としているのは何でしょう?

(1)自己を徹底的に肯定すること
(2)自己を肯定しながら自然や他者も肯定する
(3)自然や他者を新しい価値体系の中で認識しなおす
(4)自己を徹底的に否定し、それからより高みへと引き上げる

●問題2  (1)自己を徹底的に肯定すること

ニーチェの言う“必然的なことを愛する”とは、現実をすべて肯定し受け入れるということ。「この人を見よ」はニーチェ最後の著述で、彼の考え方が集大成されているが、これ以前の「超人」や「ツァラトストラ」で打ち出している、現実をそのままに受け入れる人間こそ超人であるとする考え方や現実世界の背後に仮象世界があると説く宗教を欺瞞だと批判する考え方を鮮明に出している。

カテゴリ:論語クイズ

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