備わるを一人に求むることなかれ

そなわるを一人ひとりに もとむることなかれ

一人の人に完全かんぜんもとめてはいけない。

無求備於一人   (微子第十八 10)

【対話】

A リーダーシップは、 一人で発揮できるものではない。 劉邦による漢の創業は、 蕭何しょうか(政務)、 韓信かんしん(武将)、 張良ちょうりょう(軍師) という、 それぞれすぐれた家臣がいたから可能だったのであり、 源頼朝による鎌倉幕府の創業も、 同じく、 大江広元 (政務)、 源範頼 (代官)、 北条義時 (武将) ほかに支えられていたからだ。
指導者にすべての優れた素質を求めることはできないし、 仮に一人で切り盛りしている集団があるとすれば、 それは決して長持ちしない。
B (そのとおり。) ただし、 このことはリーダーシップのことだけではない。 計画や準備など、 目立たぬ裏方の仕事でもそうだ。 他人の協力を求めるためには、 まず聴く姿勢が必要だ。

【エピソード】

ゆるすすべを知らなければならない。 喧嘩腰けんかごしの怒りっぽい態度をいつまでも持してはならない。 これは隣人を傷つけ、 またわれわれが自ら楽しむのを妨げるものである。 人間の弱点を認めて、 それと闘うよりもむしろそれに従わなければならない。」
「ナポレオン言行録」 (大塚幸男訳・岩波文庫)
作者オクターブ・オブリは、 ナポレオンの言動の中に、 非凡ひぼんさと普通さをとらまえている。 そして、 ナポレオンの非凡さは、 完璧かんぺきはありえないと覚悟する一方で、 現実的な思考方法をとっている点にあるとみている。

カテゴリ:論語解説

タグ: