仁に当たりては師にも譲らず

じんたりては にもゆずらず

人として恥ずかしくない生き方については、 相手が師と仰ぐ人であっても、 人任せにしていてはいけない。

当仁不譲於師   (衛霊公第十五 36)

【対話】

A 先生や周囲といった人的なしがらみを考えすぎてはいけない。 そして信念
にそむいてもいけない。

B 正平二年 (1347) 十一月、 楠木正行軍に敗れた山名・細川軍は、 京へ逃げ帰ろうと渡辺橋 (大阪 天満橋辺り) に殺到したが、 小さな橋のため多くの将兵が川へ落ちた。 追討をかけていた正行軍ではあったが、 彼らを助け、 衣服、 食料、 手当てを与えて帰らせたと、 太平記にある。 十一年前に湊川で亡くなった父、 楠木正成の無念を思えば、 ここで敵に情けをかけなくてもよいのだろうが、 正行にはなぜか仁の心がおこったのだろう。 日本では博愛の心は、 多く武士の間からおこってくる。 正行はこの後、 四条畷の戦いで陣没する。

【エピソード】

天上から火を盗み人間に与えたことで、 ゼウスの怒りを買いコーカサス山頂にしばられたプロメテウスは、 ゼウス自身も人間に追われることを予言する。 海神オーケアノスがゼウスへの謝罪を勧めるが彼は拒否。 ゼウスは自分の恋慕する乙女イーオーから自分の運命を聞いたため、 その訳を知ろうとヘルメスを彼に差しつかわすが、 これも断固拒否。 師と神、 道を求めることと運命を知ることに違いはあれ、 人は時に大きな相手と戦わなければならない。
「縛られたプロメテウス」  アイスキュロス 古代ギリシャ

カテゴリ:論語解説

タグ: