朋あり遠方より来たるまた楽しからずや

ともあり遠方えんぽうよりたる またたのしからずや

友達が遠くから来てくれる、 なんて楽しいことだ。

有朋自遠方来、 不亦樂乎   (学而第一 1)

【対話】

A 友だちのおかげで、 自分が社会の一員、 世に棲む者であることがわかる。

B (そうだ。) 友情のおかげで天才の作品が世に残った。 「檸檬れもん」 は、 早逝そうせいした梶井基次郎かじいもとじろうの作品の中でも、 ひときわ青春の不安と焦燥しょうそうを、 美しい筆致ひっちなかで表現したものとして名高い。 紡錘ぼうすい形の、 輝くような色つやをした、 ただレモン一個の存在が、 作者の心象をドキドキするような緊張感で表現している。 この鮮烈せんれつな表現に感嘆かんたんした友人の三好達治や川端康成や横光利一らが、 まだ無名の彼の作品を世に出す手伝いをしてくれた。 まことに若き日の友情は、 きらきらとして美しい。

【エピソード】

閑谷学校教授役の武元君立たけもとくんりゅうのもとへ、 友人頼山陽らいさんようが訪ねてきたのは、 文化十一年 (1814)。 直前に山陽の父頼春水らいしゅんすいが訪問し校内にある茶室を 「黄葉亭こうようてい」 と名づけていたので、 山陽は学校周囲の景観を詠んだ 「黄葉亭記」 という詩をした。 二人はともに菅茶山かんちゃざん(備後神辺)のもとで学んだ友人どうし。 ともに、 歴史の中に 流れ を見つけて、 それを汲み取ろうとする姿勢を持っていた。 君立の 「史鑑しかん」は山陽の「日本政記にほんせいき」 に大きな影響を与えた。 切磋琢磨せっさたくま しあう友だちは何ものにもかえがたい財産だ。

カテゴリ:論語解説

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