上級 第16回(3)

●エピソード3

「デミアン」(ヘルマン・ヘッセ)において、少年シンクレールは、家族という安住の世界の外に、(同級生を経由して、また)別の悪の世界のあることを知ったが、このとき、不思議な少年デミアンに助けられる。デミアンはシンクレールの顔を見て”カインの印“(罪業を背負いつつも、神の記憶・祝福にあずかる者の意) があると話すが、シンクレールにはその意味がよく分らなかった。その後大学生となってもデミアンとの交友は続く。戦争の気配やカインの印のことで「自分は何者か、何を維持すべきか」と悩み続けるシンクレールではあったが、デミアンの郷里でその実母エヴァ夫人から優しく助言される。以降、シンクレールは夫人を慕うようになる。折しも彼らの国は戦争に突入した。文明的にも精神的にも荒廃しきった社会の姿を見て、キリスト教的倫理観の限界を知り、いやがおうにも現実に適応しなければならないと感じる。シンクレールが奇しくもデミアンに再会したのは、従軍中の野戦病院のベッドでだった。

(自己探求を通じて、運命と向き合うことの大切さを認識する彼ら)

 

●問題3-A

彼らが経験することとなった戦争はどの戦争でしょう?

(1)普仏戦争
(2)植民地戦争
(3)第一次世界大戦
(4)第二次世界大戦

 

●問題3-B

シンクレールがエヴァ夫人から助言されたときの比喩は次のどれでしょう?

(1)麦が枯れなければ、次の世代の種とはなりえない。
(2)昔の人が木を植えてきたから、今の豊かな森がある。
(3)理想は星のように輝くだけで、決して手は届かない。
(4)卵から出ようとする鳥は、殻を破壊しなければならない。

 

●問題3-C

カインの印のことは、何が出典でしょう?

(1)コーラン
(2)旧約聖書
(3)新約聖書
(4)仏典

●問題3-A  (3)第一次世界大戦

第一次世界大戦は、国家・社会の意義や人生の意味について多くの人にそれまでのそれと大きく変わったことを印象づけた。第一次世界大戦の前後の時代には、そういうことを問い直すことをテーマとした文学作品の大作が多い。

 

●問題3-B  (4)卵から出ようとする鳥は、殻を破壊しなければならない。

夫人は、「ヨーロッパをおおう戦争のせいで人の精神はまったく荒廃してしまった。でも新しい理想を切りひらくには前例を求めてはいられない。そのためには、ひなどりのように、古い世界の殻を破り、自分を新しい世界に順応させなければならない。あなたのカインの印はそのためにある」と、シンクレールに助言した。

 

●問題3-C  (2)旧約聖書

旧約聖書に「カイン(兄)とアベル(弟)」の話として登場する。兄弟は、アダムとイブがエデンの園を追われた後に生まれたとされている。カインとアベルのそれぞれが捧げた供物をヤハウェの神が公平に扱わなかったことが原因で、カインはアベルに嫉妬し、これを殺害した。神はカインへの復讐をさせないためにカインに印をつけた、とされている。聖書の中で、人類最初の罪とされる。なお、有島武郎の小説に「カインの末裔」というのがある。

カテゴリ:論語クイズ

タグ: