君子は道を憂えて貧しきを憂えず
君子は道を憂えて 貧しきを憂えず
大切たいせつなことは何かを考えなさい。 貧しくなったらどうしようと心配しんぱいしてはいけない。
君子憂道、 不憂貧 (衛霊公第十五 32)
【対話】
A 経済的なことであくせくするな、 という意味だろう。
B (いや、 そうだろうか?) 確かに経済生活は大事だ。 しかし、 現代生活では、 もっと広く、 人生観をも含めて 「道」 について考えることも大事だ。 そのヒントになるのが、 アン・リンドバーグ (飛行家リンドバーグの妻) の 「海からの贈物」 だ。―――貝の不思議な形への好奇心、 生き物の営み、 潮騒のメカニズムから、 自然の摂理の幽遠さに感じいっている。 精神的高みを得るための方法は、 物を捨てること、 好き嫌いをしないこと―――と締めくくっている。 「道」 は、 意外に近いところにあると実感させられる。
【エピソード】
戊辰戦争の余じんがいまだにくすぶる中、 極度に困窮した長岡藩は、 隣の三根山藩から、 米百俵の見舞いを受ける。 腹を減らした重臣たちがそれで空腹を満たそうとしたところ、 大参事の小林虎三郎がこれを売った金で国漢学校を創ろうと提案。 『今日の百俵は、 明日の一万俵になる』 として押し切った。 その後、 長岡からは優れた人材が輩出した。 貧しさを憂えず、 人材教育という 「道」 を選んだ先人の決断はえらかった。 この史実は、 その後、 山本有三の 「米百俵」 という戯曲になった。
カテゴリ:論語解説
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2016年6月14日