思い邪なし
思い邪なし
(『詩経』 の詩歌の特徴を一言で言えば、 心がまっすぐ、 ということだ)
―――ずるいことや不正なことを考えてはいけない。
思無邪 (為政第二 2)
【対話】
A (とは言っても、) だれでも胸の奥底には、 邪な思いがひそんでいる。
B (だからと言ってそれが許されるわけではない。) その邪な思いを、 どう抑えるかが人としての務めだ。 そして、 それが素直に実行できるようにしなければならない。 論語の 「七十(歳) にして心の欲するところに従えども、 矩(=規則、 常識) をこえず」 もそういう意味だ。
【エピソード】
正直者の村人、 アーネストは、 村の背後にある人面の大岩をめぐる伝説、 「この顔の人が、 将来この村を幸せにしてくれる」 を信じ、 その人の出現をずっと待っていた。 世の中の移り変わりの中でその候補は、 将軍、 商人、 政治家と、 いく人か現われたが、 いずれも期待倒れに終わった。 アーネストは、 いまは牧師として村人に敬虔と勤勉をとき、 また自身そのように生きているが、 ある時、 旅の詩人に言われた、 「あなたこそ、 その人だ」 と。
正直に謙虚に生きることが、 人や社会を幸せにする条件だと、 アメリカの初期の良心的作家は語っている。
「人面の大岩」 米 ナサニエル・ホーソン 1850年
カテゴリ:論語解説
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2016年5月19日