上級 第21回(3)

●エピソード3

「三四郎」 (夏目漱石)
熊本出身の三四郎が上京する汽者の中で、ある男が日露戦争に勝った日本の今後を「ますます発展するでしょう」と言ったのに対し、広田先生(あとでそう分かるのだが)は「滅びるね」と答えた。東京の大学を出てあとは、出世すればいいだけと構えていた三四郎だったが、このときの問答のことが、のちのちまで記憶に残ることとなった。
「滅びるね」は、西洋のただ真似をする日本が、かりそめの勝利に浮かれて、所詮は皮相うわすべりな文化をまるで自分独りの成果のように勘違いしていることへの警鐘だった。西洋文明と自己の文明それぞれの深奥を知らずに(”習わざる”ままに)、ただ勝利、しかも軍事面だけでの勝利で自信を吹聴しあっている("伝えている”)様は、広田先生にすれば、滑稽を通り越して悲しく感じられたのだろう。
 

●問題3-A

「三四郎」(夏目漱石)に出てくる美禰子は、婚約者がいながら、時々三四郎に対して思わせぶりな態度を取る。あるとき美禰子自身が、自分のことを形容して言った詞は何しょう?

(1)Stray sheep
(2)Unconscious hypocrite
(3)Leading stuff
(4)Innocent youth
 

●問題3-B

前問の言葉の出典は何でしょう?

(1)バイロンの「チャイルド・ハロルド」
(2)ディケンズの「クリスマス・キャロル」
(3)オスカー・ワイルドの「サロメ」
(4)聖書
 

●問題3-A  (1)Stray sheep

ガスパル・ヴィレラは、同通信の1561年8月17日付書簡で、「この町はベニス市のように執政官によって治められている」と記述している。
 

●問題3-B  (4)聖書

美禰子は菊人形見物の折、「迷子の英譯を知つていらしつて」という謎の問いを三四郎に向ける。この言葉の出展は、聖書「ルカによる福音書」である。”Stray sheep”とは「迷える小羊」(=罪人)を意味する。
 

カテゴリ:論語クイズ

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